日本財団 図書館


 

近い将来、世界人口の2人に1人が都市の住人になると言われ、来世紀早々には、後発国、途上国でも人口の半分が都市に集中すると予想されています。そうなると将来の社会はどうなるでしょうか。今までとは違った、かつて経験したことのない特色を持った社会が生まれます。農村部から離れて都市に住む人々は、農業以外の産業活動あるいはサービス業に従事するわけですが、そうなると人々の生活様式も全く変わってしまいます。産業構造も変わります。そして価値観も変わります。このように都市化の問題は、今私達が来世紀に向かって取り組まなければならない最も重要な課題の1つであり、しかもその問題は遠い将来の問題でなく、すぐそこまできている問題なのです。数年先には、このような状況が、かつて経験したことのない規模でどんどん起こります。つまり今からお話しする都市化の問題というのは、フィリピンの事例にとどまるだけでなく、普遍性を持っているということにご留意いただきたいと思います。
さて、お手元の配布資料の中に、「アジア諸国の都市化と開発調査報告書-フィリピン国-」と題したグレーの本が入っていると思いますが、昨年はフィリピンを取り上げて、都市化の調査を行いました。フィリピンの事例を知ることは極めて興味深く、また経済開発、社会開発が遅れてきた国を知る上でいろいろと参考になり、1つの指針になると思われます。この報告書は7章に分かれていますが、単なる都市化だけでなく、経済発展、開発についても触れています。1時間もあれば読めますので、是非お読みください。
それでは、皆様の国で広範囲に深く進んでいる「都市化」とは何を意味するのでしょうか。何が重要で、都市化がもたらす問題は、従来の問題とどう違うのでしょうか。まず、都市化の進展は各国によってばらつきがあります。都市化が進んでいるところ、進んでいないところと様々あり、都市化率も35%、17%といろいろと違っています。また、都市化というものは是か非か、人類にとって福音なのか否かといった理論上の問題もあります。理論的には都市化の現象は、先進国であろうと途上国であろうとどの国も同じはずなのですが、そのプロセスに違いがあります。
いわゆる先進国では、開発が緩やかに進む中で産業化の副産物として都市化が発生します。したがって、産業化と都市化が共にバランスをとりながら進行することが可能なのですが、途上国はそうではありません。途上国では都市化があまりにも急激であるため、産業化に伴わずに進行しているのです。この産業化のぺースと都市化のぺースの間に生じるインバランス(乖離)が引き起こす「ひずみ」がアジアの一部の国でも発生し、問題となっています。都市部であまりにも急激に人口が増えてしまい、行政府はますます流入し続ける人々への対応が取れなくなってしまっています。あまりにも都市化のほうが急激に進むために、地方からの流入人口を受け入れる都市のほうは、自己調整をする時間がなく、間に合わないのです。これがアジアをはじめと

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION